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データヘルス改革の推進は必要だし電子処方箋も大賛成ですが・・・~○○の費用もっと少なく出来ませんか?~

いわゆるデータヘルス改革の一環として、
オンライン資格確認等システムの本格導入が今年度より始まりました。
4月より診療報酬・調剤報酬にも加算内容が加わることになり、
すでに算定されている医療機関も増えているのではないでしょうか。

そしてここ最近では電子処方箋についての案内がかなり活発になってきました。
7月末に行われた厚生労働省主催のオンライン説明会に参加された方や、
配信にて見られた方も多いと思います。

厚生労働省がだいぶ力を入れた対応をしている理由は簡単で、
この電子処方箋の運用が令和5年1月より本格始動することになっているからです。

今回はこの電子処方箋の導入について感じたことをまとめたいと思います。

先に結論を言うとデータヘルス改革に関しては大賛成ですが、
システム上必要となる電子署名(HPKIカード)の費用はもっと下げるべきではないか、
と考えています。

目次
・データヘルス改革の必要性
・オンライン資格から電子処方箋導入に向けての流れ
・オンライン資格確認の有益性とは
・電子処方箋の導入の有益性は高い
・データヘルス改革は薬局運営の変化をもたらす
・個人的に感じる問題点はHPKIカードの手数料が高いこと

 

データヘルス改革の必要性

あまり詳しくない方もいるかもしれませんので、
簡単ではありますが概要について書いていこうと思います。

ご存じの通りに日本は高齢化社会です。
そして今後の展開としてこの高齢者を支える現役世代の人口の減少が、
非常に大きな課題となっていきます。
現役世代の減少の理由はもちろん少子化です。
少子化が進めば進むほど、
少ない現役世代で多くの高齢者を支える構造が固定化してしまいます。

政府は2040年を一つの目途とし、
「誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現」
に向け3つの柱を掲げています。

2040年展望

厚生労働省資料より

 

高齢者を支える担い手の減少を、
データヘルス改革によって何とか対応できる体制を整えようとしています。
もうマンパワーだけで対応するのは限界だと国が認めたわけです。

であればやるべきことは効率化です、
データや新たなAI技術、さらにはデータを活かした研究やイノベーションにより、
活路を見出すしかないということになります。
兎にも角にも、
「少ない担い手でもいかに効率よく高齢者を支えるか」
の対応が待ったなしというわけです。

データヘルス改革意義

厚生労働省資料より

オンライン資格から電子処方箋導入に向けての流れ

厚生労働省は現在使用している保険証の使用を将来的に廃止する方向で動いています。
この代わりとなるのがマイナンバーカードの利用促進となります。
すでに国は病院や薬局に対して、
2023年4月からオンライン資格確認の導入が、
原則義務化になることをアナウンスしています。
そしてこのオンライン資格確認をベースとした電子処方箋が、
2023年1月より開始されます。

電子処方箋

厚生労働省資料より

マイナンバーカード導入により国民1人1人の医療情報を一元化することで、
データの収集の効率化を進め、
それだけでなく医療機関と薬局間の処方箋データも電子化し、
医療の重複をできる限り無くし、
各医療機関の業務の効率化を図ることを目的としているのです。

ちなみにですがオンライン資格確認をベースとしたデータヘルス改革では、
健診情報などの掲載も予定されており、
今まで医療機関ごとで管理していた(というか閲覧することが出来なかった)
データ等も見れるようになります。

オン資格の基盤

厚生労働省資料より

オンライン資格確認の有益性とは

私の勤め先の薬局でこのオンライン資格確認を導入しています。
実際にマイナンバーカードを持参する患者数はほとんどなく、
1店舗でせいぜい月に1名来るか来ないかと言ったところです。
加算したとしても当然収益性は全くありません。

このシステム導入に補助金があったとはいえ持ち出し分もありますし、
ランニングコストもありますから赤黒で判断するなら赤字です

しかし通常の保険証受付でも保険内容の確認が取れるのは非常に助かりますし、
仮に保険証持参しなかったとしても有効かどうかの判断が付くことから、
決して丸々損している感覚はありません。

むしろレセプト請求の際に返戻対象となる資格喪失後受診に対して、
受付時に新保険証の有効性が確認できることから、
収益はともかくとして事務作業の効率は今後上がっていくような感覚もあります。

電子処方箋の導入の有益性は高い

そもそも日本の医療業界はこれまで
「なかなかのアナログ社会」で構成されています。
私が就職した約20年前と比べればだいぶ減りましたが、
病院によってはいまだに手書き処方箋が発行されています。

さらに病院への疑義紹介や報告書などではFAXでのやり取りも珍しくありません。
海外では基本的にデータでのやり取りがメインとなります。
ご存じの方も多いと思いますが、
FAXの使用率は日本と比べて格段に低いです。
産業遺産の収集をすることで知られる米国の「スミソニアン博物館」では、
FAXが展示されていると聞いたことがあります。
もちろん海外でも使用率0%ではないですが、
メインで使用される機器というわけではないでしょう。

システムとして電子処方箋の導入は、
紙でのやり取りと比べ格段に効率化が計れることは間違いないと思います。

全てがデジタル化すれば万事うまくいくとは思っていませんが、
それでも処方箋が紙からデータ扱いになるだけでも、
処方箋のデータ化は処方入力の簡素化が出来ますし、
内容の不備もすぐにチェックできるはずです。

処方箋の用法や容量が記載されていない、
なんてことは今後起きなくなるかもしれません。
ですから薬局にとっては電子処方箋の導入はメリットが多いと感じています。
オンライン資格確認も含めて個人的に医療のデジタル化は大賛成です。

データヘルス改革は薬局運営の変化をもたらす

この改革により薬局運営はガラリと変わるであろうと思います。
繰り返しになりますが、
今まで紙がメインであった処方箋の内容はすべてデータ化されます。
これは何も処方レシピだけがデータ化されるわけではなく、
個人情報がそのままデータ化されるわけです。

オンライン資格確認の感想でも書いたように、
そもそも事務作業がかなり削減されるはずです。
つまり薬局の事務員の採用がかなり削られることでしょう。

いま薬局で事務員として働いている方を、
別の薬局業務(おそらくほとんどは調剤補佐)に回すことが出来るはずです。
よって薬剤師の採用数も抑制できることになります。
総合的に見て人件費の削減は可能と考えます。
ということは知識やスキルの低い薬剤師、
対人業務(接客)のできない薬剤師は淘汰される時代がすぐやってくるかもしれません。

また薬局運営について最も重要視されてきた「立地問題」が大きく変化することでしょう。電子処方箋の導入により、
それこそ極端に言えば全国各地の薬局を選ぶことが可能になるからです。
病院から最も近い薬局が処方箋を応需する時代がついに終焉するかもしれません。
本当の意味で支持される薬局はさらに処方箋応需を伸ばし、
たいして支持されない薬局はますます厳しくなることでしょう。
いい意味で薬局に勤務する薬剤師は覚悟しておいた方がよさそうです。

個人的に感じる問題点はHPKIカードの手数料が高いこと

今回の件で1つだけあまり納得していない点があります。
この電子処方箋の導入にあたり、
医師・歯科医師・薬剤師それぞれで電子署名が必要になります。
この電子署名にかかる費用が安くないという点です。

この電子署名は単に資格者の個人確認だけでなく、
国家資格にも紐付けされている必要があります。
現時点で薬剤師が電子署名に使える唯一のものはHPKIカードしかありません。
このHPKIカードは日本薬剤師会が発行しているカードになります。

この発行費用には公的な補助金が出ていません。
一部報道ではこのHPKIカードの発行に6,600円(非会員は8,800円)、
年間運用費6,600円(非会員は13,200円)と出ていました。
(ただし今後費用については見直しがされるようですが…)

まあ日本薬剤師会の会員の方ならともかく、
他に選択肢がないうえで非会員の費用は決して安くないと私は思います。
勤務先の薬局が費用負担してくれればいいと思いますが、
そもそもオンライン資格確認を含めシステム導入に関して補助金があるものの、
薬局の導入費用は持ち出しがありますし、
HPKIカードはあくまで個人所有の扱いになりそうなので、
費用負担を渋る薬局があるかもしれません。

個人的に費用負担はもっと下げるべきだと感じます。(本音は0円です)
なぜって・・・、医師は手数料ないんですもん・・・。

あくまで憶測ですが利権が絡んでいるのでしょうかね・・・。

きれいごとかもしれませんが、
こういう公共性の高いシステムに関してはもっとクリーンに扱っていただきたい。
特にお金に関してはより感じます。

頼みますよ、日本薬剤師会の皆さん。

 

 

 

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