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負担が軽くなるのは良いんだけど ~毎年の薬価改定ってひどくない?~

医療用医薬品の価格は国が決めており、
各医薬品後の価格を薬価と呼んでいる。
あまり一般の方にはなじみのない言葉だと思うが、
簡単に言うと、

薬価=処方箋でもらう薬の値段

といえば少し理解できるかと思う。

この薬価は国で決めているため、
例えば製薬メーカーや薬局ごとで決められるものではない。
つまり全国どこの地域でも同じ価格であり、
どこの病院や薬局でもらったとしても、
薬自体の値段は同じである。

この薬価は毎年見直されている。

これを薬価改定という。

見直されていると聞くと何となく公平に評価されているような感じがするが、

実際にはほとんどの薬の価格を下げているだけというのが現状である。

これを聞くと、
「薬の値段が下がるならラッキーじゃない、医療費が減るしね」
といいことのように感じるであろう。
確かに医療費を抑えられるなら、
薬の価格が下がったほうが良いに越したことはない。
一般の方からすれば当然の感覚だと思う。

事実、日本の医療費は増加する一方である。
理由は簡単で高齢者の人口比率が増加しているからである。
2019年度の国民医療費は約44.4兆円となっており、、
もう何年も増加が続いているのはご存じのとおりである。
そのため少しでも医療費を抑えるために国は薬価を下げているのである。

 

・・・でもね、ちょっと考えてほしいのです。
薬価を国が下げるということは、

医薬品を開発・販売している製薬メーカーの医薬品価値が下がることであり、
医薬品を在庫している医療用卸や病院や薬局の資産価値が減らされる、

ということなんです。

これが毎年行われているのです。
毎年毎年、資産が削られているのです。

 

例えばですが仮に薬価を全体で10%下げたとしましょう。

製薬メーカーの視点に立てば・・・

1錠100円で売れていた医薬品が90円に下がるということ
単純に考えて売上と利益が10%減るということ

一般市場でいえばある新製品が出たとして、
確かに最初の販売価格は高いですが、
徐々に製品が売れそれに伴い生産コストや原価コストが徐々に下がることで、
価格も徐々に下がっていきます。
もちろんそこには市場の需要と供給のバランスがあるため、
良い商品であれば多少高くたって購入するものです。

ですが医薬品はこの理論は通用しません。
なぜなら言い方は悪いですが、
国が勝手に価格を下げてしまうから。

どんなにいい薬だとしても薬価は下がります。
評価の高い薬だとしても毎年毎年下がっていきます。
医薬品の開発には莫大な資金と時間がかかります。
開発コストや生産コストの回収を上回る速さで、
薬価が下がり続けているケースも多々あると考えます。

国民にとっては薬価が下がることはありがたいですが、
製薬メーカーにとっては会社存続に関わる非常に大きな問題です。
実際に薬価改定が一因となり、
ジェネリックメーカーだった小林化工の不祥事に、
つながった面もあるのではと私は考えます。

 

次に病院や薬局の影響はというと。

在庫を抱えている卸や病院、薬局で考えてみると・・・

薬価が10%下がるということは、
在庫の資産価値が10%下がるということ

仮に100万円の在庫を抱えていたとしたら、
薬価改定されたとたんに90万円の価値になってしまうということ。
何も悪いこともしていないのに10万円の資産が吹っ飛んでしまうのです。

何でもそうですが、値段が下がるということは何らかの理由があります。
薬業界にとって薬価改定はある意味市場の論理を伴わない評価です。
もちろん医療費の一部は税金も投入されているため、
すべての薬価を市場の論理だけで変えられないことは理解できますが、
それでも経営に与える影響は大きいことには間違いないです。

でもこう言うと、
「儲かっている企業が多いじゃないの?」
と思われている方もいるとは思いますが・・・、

製薬メーカーはもう20年以上も前からM&Aが行われています。
内資・外資問わずリストラが何回か行われています。
医薬品卸もしかりです。
事実、国内の医療用医薬品の卸はほぼ4社に絞られています。
薬局も徐々に潰れていくケースが増えています。

確かに利益を上げている企業もありますが、
それって企業努力によるものではないですか。
企業努力で投資したりコスト抑えたりする企業が、
儲かってはいけないのでしょうか。
不正をしているならともかく、
まともな経営をしているのなら当然の結果だと考えます。

かつては薬価差益(薬価よりも安く購入した差額分のこと)が、
病院や薬局の利益を押し上げていると批判されていた時代もありました。
今でも薬価差益は確かにありますが、
厳しい薬価改定の結果と消費税増税の影響で、
だいぶ縮小されています。
個人的には薬価をとにかく下げる目的で行うのは非常にナンセンス。
もし薬価を下げるにしても一律に単品ごとに下げるのではなく、

医薬品の効能や効果に対する評価を軸として、
保険で使用できる医薬品の品目数を減らせばいいという考えです。

この話はまた長くなるので別の機会で書きたいと思います。

今回はここまで。

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