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薬剤師が知っていてほしい数字のお話 その⑨~固定費について考えてみる~

薬局長を8店舗、エリアマネージャーを計10年を経験し、
現在課長職として働く現役薬剤師のta-sanです。
今までの経験を踏まえて薬局長として知っておくべき知識や、
学んでおくと役立つことをツラツラ綴ります。

この内容の対象者として以下のような薬剤師さん向けの内容になります。

・最近初めて薬局長(管理薬剤師)になった方
・薬局長の経験が短い方
・薬局長として働いているが経営数字が苦手な方
・経営数字を学びたいがどう学んでいいか悩んでいる方

またここでいう薬局長とは、
「薬局において運営・管理を任された方」
を指しています。
(コンビニやスーパーで言うと店長になります)

薬剤師向けの話になりますので、
いわゆる調剤薬局をイメージした内容になりますが、
ドラッグストアの物販薬局長の方でも、
理解できるように説明します。

 

今回は固定費について説明します。
おさらいになりますが、
固定費は「売上の増減に関係なく、常に決まった金額がかかる経費」
になります。

単純に考えれば利益を出すためには、
できるだけ経費を抑えたほうがいいに決まっています。
ですから前回説明した固定費や変動費を
いかに抑えていくのかは言うまでもありません。

特に固定費自体を抑える意味合いは、
とても重要なポイントになります。
これからそれを説明していきます。

 

固定費を下げるメリットを考える

まずは固定費を下げるメリットについて考えていきましょう。
前回示した固定費と変動費のグラフで考えていきます。

まずは売上が0円で考えてみます。
(もちろん実際には売上が全くない月はほとんど無いとは思いますが・・・)

売上が0円ということは、
その月の経費は固定費のみが計算されることになります。
変動費は全くかからない計算です。
なぜなら変動費は売上に比例して増えていく経費だからです。

もしあなたの店舗の固定費が200万円だとします。
であれば売上0円の月の経費は200万円です。
(グラフでいうと青のラインが固定費を表しています)
当たり前ですね。

ではもし固定費を50万円削減したとしましょう。
グラフはこうなります。

まず見ていただきたいのは青のラインの固定費です。
金額でいうと固定費を示す青のラインが下がりました。
金額でいうと200万円から150万円になります。

この時固定費のうえに乗っかっている変動費、
つまり緑のラインも固定費が減った金額だけ下がることになります。
(グラフではうすい色の部分が減額した金額となります)

そして繰り返し伝えている通り、
固定費は売上の影響を受ける経費ではないため、
月の固定費は常に150万円です。
仮に売上0円の月だったとしても、
月の売上が1億円だったとしても経費は150万円となります。

固定費は常に一定というのが重要なポイントです。
うまく固定費を下げることが出来れば、
利益を出しやすい店舗の体質にすることがたやすくなります。
まずは固定費をいかに抑えるのかがポイントとなるのです。

 

固定費を補う客数や売上を考えてみる

固定費を減らすことで、
利益が出やすくなるというイメージが、
なんとなく湧いてきたと思います。

ではこの削減した固定費が、
どれくらいの影響があるのか考えてみましょう。

調剤薬局のケースで考えてみます。
具体的にどう考えるかというと、
この固定費を賄うために処方箋枚数(つまり患者数)がどれほど必要になるのか、
実際に計算していきましょう。

以前の回で全国の処方箋平均単価は9,849円
そのうち技術料は2,467円だとお伝えしました。

処方箋単価

 

なのでこの数字を使って考えてみましょう。

処方箋単価(9,849円) = 技術料(2,467円) + 薬剤料(7,363円)
(ちなみに今回は薬価差益を抜きで考えます)

 

1枚当たりの技術料は2,467円ですから、
固定費が200万円分を稼ぐには、

200万円(固定費) ÷ 2,467円(技術料) = 810.70人(客数)

つまり811枚の処方箋(客数)が必要になります。

 

では固定費が150万円だとしたらどうでしょうか。

150万円(固定費) ÷ 2,467円(技術料) = 608.03人(客数)

つまり608枚の処方箋が必要になります。
比べてみると固定費が150万円の店舗は、
200万円の店舗に比べて203人少ない客数でも
経費を賄えることが出来るというわけです。
言い換えれば固定費50万円は客数203人と同等の価値があるとも言えます。

 

では次は売上で考えてみましょう。
先ほどの計算で50万円の固定費の差は、
客数に換算して203人の価値があることがわかりました。
ですので売上に変換するには客単価(処方箋単価)を掛ければ、
計算することができます。

9,849円(処方箋単価) × 203枚(客数) = 199.93万円(売上)

実に200万円近くの売上の差が出ました。
固定費50万円は売上に換算すると200万円の価値があるということになります。

 

このように固定費を抑えることが、
いかに利益の出しやすい構造になりやすいかということが、
すこしイメージできたのではないでしょうか。

単純に考えてみて、
毎月毎月200人以上の客数を増やすか、
200万円以上の売上を続けることを考えた時、
相当な店舗の販売努力が必要になりそうだと感じますよね。

 

では整理してみましょう。

今回はここまでとします。
次回はもう一つの経費である変動費について考えてみます。
同時に「損益分岐点」という考え方も説明しようと思います。

実はこの「損益分岐点」の考え方は、
今回の内容そのものになっています。

詳しくはまた次回で説明します。

 

今回の内容が少しでも参考になったら嬉しいです。

 

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