blog

GEメーカーの決算を見て思うこと~兎にも角にも薬の流通は止めないでくれ・・・~

現役薬剤師のta-sanです。
今のポジションは課長職。
現場目線よりも少し経営的な視点でダラダラ書きます。

 

5月も後半になり各社2021年度の決算報告が行われています。
薬局で働く私のような薬剤師や関係者の方は、
GEメーカーの決算報告に、
何とも言いようのない不安感が生まれたのではないでしょうか。

いや、そもそも決算報告の前に報道された、
日医工のADR申請に
「一体GEメーカーの経営状況はどうなっているの?」
と驚きがあったと思います。

 

ご存じの方も多いと思いますが、
日医工のHPには下記のプレス発表を確認してみます。

日医工プレスADR手続き

 

報道された時点で赤字額は1,000億以上とのこと。
うーん、金額だけ見てもとても厳しいですな。
もちろん日本国内の影響による経営不振ばかりではなく、
アメリカ事業の失策という面があるのも事実ではありますが、
昨年には行政処分も受けていますので、
個人的には額面以上の負の影響があると感じます。

 

 

さらには同時期に沢井製薬の決算報道もされましたが、
こちらも同じく厳しい結果・・・。
国内3大GEメーカーの東和薬品の決算と合わせて比べてみます。
(単位は百万円)

沢井製薬も日医工ほどではないですが、
営業利益は約360億円の赤字です。
日医工同様、アメリカ事業不振の影響が大きかったようです。

私の経験上3大GEメーカーのうち2社が赤字決算になることは、
なかったと思います。
個人的にもなかなかな衝撃を受けています。

 

赤字決算だったとは言え、
まだ沢井製薬は基本的に通常営業ができていますが、
先ほど書いた通り日医工は再生機構へ申請中です。
これからどんな事業清算がされるかはもちろんわかりませんが、
薬局で働く私にとって1番に気になる点は、
「これからの医薬品の流通にどう影響するか」
になります。
皆さんも同じ感覚ではないでしょうか。

 

振り返れば2年前の2020年12月、
小林化工が起こした不祥事によって引き起こされた医薬品の流通不足は、
現時点においても全く改善されてはいません。
いやむしろ徐々に悪化している面も感じるくらいです。

 

言い方は悪いですが、
「たった1社のGEメーカーが起こした不祥事」で、
こんなにも流通に影響が出るなんて思いもしませんでした。
2019年の小林化工の売上高は約370億円とのこと。
年間の薬剤料の合計が約5.6兆円ですから、
単純計算にはなりますが、
小林化工の占める割合は0.66%にすぎません。
にもかかわらずその後の影響はこのありさま。
今の日本の医薬供給体制がいかに脆いかを、
痛感せざるを得ません。

 

日医工の報道の後にとある卸担当者と話す機会がありましたが、
今の時点では流通に大きな影響は出ていないとのこと。
日医工の医薬品も特に変わらず出荷できるとを聞きました。
ここまでは一安心ではありましたが、
ただこの状況がいつまで続くかは全く予測がつかないとのこと。

 

まあ、そりゃそうですよね・・・。
日医工の債務に対してどのような清算がされるかはわからないですし、
一部報道では採算の取れない(利益の出ない)GE品の、
製造中止も検討されているとかいないとか・・・。
いやいや、生産量減らされたらますます在庫管理きつくなるじゃないですか。
これ以上は勘弁してくれよ・・・。

 

薬局って医薬品の在庫がなければ、
全く商売にならない業界なんですよね。
いくら薬剤師のスキルが高かろうと、
物販でいくら販売・接客スキルの高い薬局であろうと、
とにかく「物」がなければ何も始まらない
だから今の在庫が十分に供給されない状況は、
とにかく厳しく、商売上がったりの状況・・・。

 

経営責任は当然メーカー自身の問題ですが、
メーカーではどうすることもできない原因があることも事実です。
以前から述べている様に、
薬価改定の影響を無視することはできません。

薬価を下げることは医療を受ける国民にとっては、
負担が減りメリットがありますが、
メーカーにとっては売上の目減り、
収益の悪化を招きます。
もちろんこれは薬局も卸も同じです。

 

もういい加減に限界は来ていると思います。
薬業界の構造の限界が見えています。
国はもう動くべきではないでしょうか。

 

なんて思っていたら、大臣の下記の発言・・・

厚生労働省としては、
これまでも後発医薬品の安定供給に向けまして、
各製品の供給量に関する実態調査を行うとともに、
製薬企業に対しては供給量が十分な製品については、
出荷調整の解除の依頼を行う、
あるいは医療関係者に対しては、
正確な供給状況を共有しつつ適切な注文を依頼する、
そしてまた、類似成分の薬等についての増産を依頼する、
といった対応を行ってきたところであります。

 

令和4年5月17日 後藤大臣会見概要より抜粋

 

要約すると、
「国としては実態調査はおこないますよー、
他の対策は国として何もしませんので、
メーカーや各医療機関がんばってねーーー」
ってことですか?

は?、いまさら実態調査はないでしょう。
いつから供給不足になっていると思っているの?
そしてメーカーには出荷調整解除してね、
病院や薬局は発注抑えてねって・・・。

そもそも在庫足りてないんだよ、
だからメーカーや卸は出荷調整してるんでしょうが。
発注したって納品されないんですけど?
だから病院や薬局の在庫足りてねーのよ。
発注調整できるわけねーじゃん。

よくもまあ、こんなこと言えるなというのが私の本音。
国だって当事者なはずなんですけどね、
本当に構造が壊れてからでは遅いんですけどね。

 

 

本当にこの国は誰も責任を取らない国になりつつあるな・・・。

 

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA