現役薬剤師のta-sanです。
今のポジションは課長職。
現場目線よりも少し経営寄りな視点でダラダラ書きます。
5/31に大幸薬品が希望退職者を募集するとの報道がありました。
プレスリリースは以下の通りです。
簡単に内容を言うと、
募集人数は30名ほどで、
対象者は40~59歳までの社員。
募集理由は言わずもがな「経営状況の悪化」です。
もちろん同時に役員報酬の減額などの報道もありましたが、
結局は「団塊ジュニア世代の使い捨て」という印象でしかありません。
私はその世代より少し若い世代ですが、
それでも「失われた20年」にドップリつかっている世代ですから、
他人事とは到底思えないのです。
大幸薬品のイメージと言えば、
私のような昭和生まれの40代以上であれば、
「ラッパのマークの正露丸」
になります。
以前はよくCMをやっていました。
(「ラッパのマーク」と言えば・・・これですね)
ご存じの方も多いと思いますが、
正露丸の由来は大国であったロシアと戦争になった際(日露戦争)に、
「露西亜に勝つ」という意味を込め、
士気高揚の目的として名付けられたといわれています。
日露戦争は1904年開戦(明治37年)ですから、
今でもドラックストアなどに販売されていることを考えると、
非常に長く親しまれている商品と言えます。
とはいえ若い方はあまりなじみのない商品かもしれません。
今の20~30代では「クレベリン」のほうが、
知名度のある商品と感じるでしょうか。
(何かと話題のクレベリン・・・)
さてこの息の長い「正露丸」を抱えている大幸薬品が、
なぜ経営悪化に陥ってしまったのか。
簡単に言えばロングセラーである「正露丸」に続く、
ヒット商品を生み出すことが出来なかったからにつきると考えます。
実際に大幸薬品のHPを見てみると、
「正露丸」関連の商品か「クレベリン」の商品しか出てきません。
正露丸は下痢や食あたりといった消火器症状に使用する商品ですが、
同じ症状に対する商品数は各社多く販売しており、
大分苦戦していたのだと想像できます。
私がまだ物販で働いていたころでさえ、
(もう10年以上も前の話ですが)
購入者の大半は年配の方がほとんどでした。
若い世代の購入率はだいぶ低かったという印象です。
ここ数年は「クレベリン」の販売に注力していました。
ジリ貧が見えいている「正露丸」に変わる、
第二の柱として考えていたことは明白です。
しかしこの「クレベリン」に対しては、
消費者庁より「景品表示法に基づく措置命令」が出されてしまいます。
「クレベリン」の特徴としていた、
空間除菌の効果は認められないと判断されてしまいました。
途中だいぶ抵抗を見せていましたが、
これは先を読み違えた経営陣の判断ミスであったと思います。
当然商品は店頭から消えてしまいました。
一部では販売も続けていましたが、
行政措置が大々的に報道されたことから、
一般消費者のイメージも相当悪化したことでしょう。
実際の経営状況を調べてみました。
以下の通りです。
売上高 621百万円
営業利益 △1,672百万円
経常利益 △1,743百万円
経常利益の赤字額が売上高の約3倍あります。
かなり致命的な数字に感じます。
社員をリストラしたい気持ちはわかります。
いやそれを行ったとしても、
この状態では正直存続すら危ういかもしれません。
個人的に経営が傾いた際の対応として、
リストラはやむを得ない対応の一つとは思います。
しかしなぜ対象者が真っ先に40代以上に設定するのかが疑問です。
何も大幸薬品だけではありません。
今までの行われてきたリストラの大半はそうではないかと思います。
今の40代の方が仮に新卒から入社したと仮定すると、
バブル崩壊後のつけを払わされ始める時期に就職し、
その後の景気の悪い状況下において会社を支えてきた世代だと思います。
今まで会社を支えてきた世代を、
なぜこうもあっさりとリストラ対象とするのか。
感じることは「使い捨て」にされているとしか思えません。
プレスリリースには再就職支援を行うとされていますが、
本当に40代50代に就職先何てあるのでしょうか。
ないとは言いませんがあまりにも簡単に考えている気がします。
この世代はまだ子供も学生だろうし、
住宅ローンだって抱えているはずです。
家計にそれほど余裕があるとは言えないはずです。
経営状況の悪化を招いた要因は、
社員にあるのではなく経営陣にあるはずです。
なぜ経営陣は役員報酬減額の対応しかとらず、
たいして身を切る対応をすることもなく、
これで責任を全うしているとでも思っているのでしょうか。
もちろん外から見えない部分で奮闘されていたのかもしれません。
しかし少なくともクレベリンに対する対応は、
経営陣の判断ミスだったといえるでしょう。
残された社員も大変だと思います。
この状況を見て20代30代の方が、
「リタイアするまで安心して働ける会社」
とは全く見ていないでしょう。
仮に今後経営が回復したとしても、
再度不振に陥った場合は自分たちが切られるかもしれないと感じるはずです。
何ならさっさと見切りをつけ自ら退職する方もいるでしょう。
個人的な感想ですが、
いつからなのか「責任を取るべき人」が正しく責任を取らず、
責任を取る必要のない人に責任を押し付けられてしまうのか。
本当に疑問しかありません。
部外者の私がが言うのは見当違いかもしれませんが、
何とか存続できればいいと思います。
会社に残る方も去ってしまう方も
本当に社員の方には頑張ってほしいと思います。