3月末に医療費について話題となったニュースがありました。
それは、
マイナンバーカードを医療機関に提示すると負担が増える
というニュースです。
一般の方にはあまり知られていない事ですが、
2年ごとに診療報酬が変更になります。
診療報酬とは簡単に言うと、
病院で受ける検査や診察、薬局でもらう医薬品の料金を決める制度です。
これが4月に変更になり医療費の計算方法が変わりました。
今回の変更点の中に、
このマイナンバーカード利用についての項目が追加されました。
内容は以下の通りです。
<具体的な内容>
・オンライン資格確認を導入しており、患者の薬剤情報又は特定健診情報等を取得し、当該情報を活用して診療等を実施した場合
初診料に対しての加算:7点
再診料に対しての加算:4点
外来診療料に対しての加算:4点
・オンライン資格確認を導入しており、健康保険証またはマイナンバーカードで資格確認を実施(薬剤情報又は特定健診情報等の取得なし)した場合
初診料に対しての加算:3点(令和6年3月 31 日まで)
<対象患者>
オンライン資格確認システムを活用する保険医療機関を受診した患者
<具体的な内容>
・オンライン資格確認を導入しており、患者の薬剤情報又は特定健診情報等を取得し、当該情報を活用して調剤等を実施した場合
調剤管理料に対しての加算:3点※1
・オンライン資格確認を導入しており、健康保険証またはマイナンバーカードで資格確認を実施(薬剤情報又は特定健診情報等の取得なし)した場合
調剤管理料に対しての加算:1点※2(令和6年3月 31 日まで)
<対象患者>
オンライン資格確認システムを活用する保険薬局において調剤が行われた患者
<補足>
※1 月1回に限り所定点数に加算
※2 3月に1回に限り所定点数に加算
うーん、相変わらず国の考える日本語は非常にわかりにくい・・・。
要はマイナンバーカードを保険証利用した医療機関には、
追加で料金を患者に請求していいよという内容です。
もちろん料金が上がることになるので、
医療機関からしたら収入が増えます。
しかし患者から見ると医療費の負担が増えるということにもなります。
ではなぜ国はこのような医療費の設定をしたのでしょうか。
なぜ国はマイナンバーカードを医療機関での利用促進をするのか
まあいろいろと理由はあるのですが・・・。
簡単に言うとズバリ医療費を下げたいからです。
でもこれを聞くと何か矛盾しています。
医療費を下げるならなぜマイナンバーカードの利用するごとに、
患者負担(料金)を設定したのかという話になります。
マイナンバーカードの利用についてのメリットですが、
国が考える大きな点として、
国民1人1人がどの医療機関にかかって、
どんな治療しているかのデータ管理を簡素化することにあります。
そしてこのデータをもとに重複した検査や治療を抑制したり、
必要以上の医薬品を使わないようにコントロールしたいのです。
無駄な医療費を抑え、質の良い治療を提供することにつなげたいのです。
より詳しい内容については、
厚生労働省より案内がありますので、
こちらで確認してみて下さい。
ではなぜデータ管理をすることが医療費の抑制につながるのでしょうか。
医療機関同士での情報交換がなかなかできないという現状
下記の表は国が考える将来の医療像をイメージした図です。
ここにあるように患者(国民)を中心として、
各医療機関や薬局、介護事業者の連携を強化することで、
医療を提供していこうと考えています。
しかしここでネックになるのが患者データです。
例えば医療機関を受診するたびに、
同じような検査を受けた経験はないでしょうか。
また医師から別の病院での治療歴や、
薬局で他に飲んでいる薬がないかなど、
聞かれた経験もあるかと思います。
そもそも各医療機関は、
自医院で受診した患者データの記録はしていますが、
他の医療機関のデータを持ち合わせていません。
もちろん全く情報交換を行っていないわけではないですが、
相手の医療機関に直接電話したり、
FAXでやり取りするなど、
正直やり取りがめんどうであるのが現状となります。
薬局に関してもお薬手帳を持参して頂ければいいのですが、
持っていなかったりちゃんと記録を取っていなかったりすると、
併用している医薬品を確認することが非常に困難になります。
そこで国は患者ごとのデータを管理し、
全国どの医療機関や介護事業者でも、
患者データを確認できるシステムを構築する必要が出てきました。
このシステムにマイナンバーカードを利用しようとしているわけです。
設備投資に対する補助金と診療報酬
新たなシステムを推進するためには、
各医療機関の協力が必要になります。
つまり設備投資を行ってもらう必要があります。
最近病院や薬局で下記のような機器を見た方もいるのではないでしょうか。
マイナンバーカードを利用してもらうには、
こういったリーダーが各施設で必要な要ります。
またデータ通信の環境も必要なります。
そこで国は補助金制度を作り、
各医療機関への機器導入を後押ししてきました。
しかし全額補助金で賄えるわけではありません。
当然経営が思わしくない病院や、
新しい制度を良く思わない医療機関にとっては、
単なる出費でしかありません。
そこで国はもう一つの「アメ」を用意しました。
それが今回の診療報酬改定により、
マイナンバーカードを利用したら患者から料金をとっていいよ
という流れになったわけです。
目的がマイナンバーカードの利用促進にすり替わってしまった?
元々の考えとして、
国は医療費をどうにかして抑えて、
かつ効率的な医療をどう提供すればいいのか、
があったわけです。
ICTを利用したデータ管理のもとで
各医療機関同士が簡単にデータを収集できる体制であればよかったと思います。
ですがここにいわゆる政治的な思惑が絡んでしまい、
マイナンバーカードの利用もついでに便乗しちゃえ
みたいな感じになったのではないでしょうか。
最終的にマイナンバーカード利用がメインのようなイメージとなり、
かつもともと情報管理の不安から、
普及があまり進んでいないマイナンバーカードを絡ませたため、
国民に対して変な誤解と不快感を与えたのではないかと思います。
そもそもマイナンバーカードの利用が医療費を抑えるわけではないのですから。
マイナンバーカードを使用するかしないかは別にして
個人的にはこのICTを利用したシステムは必要だと思いますし、
高齢化社会に突入した日本では導入は必須だと考えます。
ただあまりにも国のやり方が不味過ぎたと思います。
(情報提供の順番を間違えるのはいつものことですね・・・)
そもそものシステムの意義と目的を周知させるのを予め行うべきでした。
あくまでマイナンバーの利用はおまけと捉えていれば、
もう少し国民の理解も得られたのではと思います。
少しでも参考になっていたらうれしいです。