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薬局長や薬剤師が知っていてほしい数字のお話 その③~利益について考えてみる~

薬局長を8店舗、エリアマネージャーを計10年を経験し、
現在課長職として働く現役薬剤師のta-sanです。
今までの経験を踏まえて薬局長として知っておくべき知識や、
学んでおくと役立つことをツラツラ綴ります。

この内容の対象者として以下のような薬剤師さん向けの内容になります。

・最近初めて薬局長(管理薬剤師)になった方
・薬局長の経験が短い方
・薬局長として働いているが経営数字が苦手な方
・経営数字を学びたいがどう学んでいいか悩んでいる方

 

では今回の内容です。

今回の内容
・薬局長が最初に覚える利益は2つでOK
・売上総利益とはなにか
※注意点
・営業利益とは何か
・売上総利益の重要性
・店舗の経費はどのようなものがあるのか
・店舗の努力で削減できる経費ってある?
・利益を上げるのなら売上を増やすことを先に考えたほうが良い

 

 

薬局長が最初に覚える利益は2つでOK

今回は利益についてお話しします。
前回のおさらいになりますが、
利益は下記の計算で求めます。

利益=売上-経費

 

利益は売上と経費の差額を表す数字とお伝えました。
今回は利益について少し掘り下げていきます。

 

 

利益にもいくつかの用語があります。
まず薬局長として最初に覚える利益は2つになります。

・売上総利益
・営業利益

まずはこの2つを理解できればOKです。
ちなみに「売上総利益」は会社によっては、
「荒利益」とか「粗利益」と表現しますが、
意味合いは全く同じです。
(ここでは「売上総利益」と表現します。)

 

売上総利益とはなにか

売上総利益は何かというと、
売上から原価を引いた利益となります。
計算方法は売上総利益も「利益」の1つですから、

 

売上総利益=売上-原価

になります。
単語が入れ替わっただけですね。

この原価ってなんだ?
と思った方もいますよね。

原価とは、
販売された商品や製品やサービスを生み出すためにかかる費用のこと
を指します。
薬局における原価とはズバリ医薬品の仕入れ値に置き換えて問題ありません。
ドラッグストアにおいては販売する商品の仕入れ値になります

 

ここから先は興味のある方だけ読んでください。
難しいと思った方は飛ばしてもらってOK

厳密にいうと原価=経費にはなりません。
医薬品や商品の仕入れには確かにお金を支払いますので、
一見経費のように見えてしまいますが、
仕入れた商品は会社にとっては資産となります。

つまり経理上は、
「お金という資産から商品という資産に入れ替えた」
と考えられるため、
例えば賃貸料や光熱費や人件費などの支払いとは、
区別して処理されるのです。

ただしここでは少しでも簡単に理解していただきたいので、
原価も経費と同じように扱うこととします。

 

すでに理解されていると思いますが、
おなじ売上だとしても仕入れ値(原価)が安ければ安いほど、
売上総利益の金額は大きくなります。

同じ商品でも安く仕入れることができる卸と取引ができれば、
より多くの売上総利益を稼ぐことができます。

 

営業利益とはなにか

次に営業利益について説明します。
営業利益とは、
売上から店舗運営に必要なすべての経費を引いた利益
のことを言います。

 

営業利益=売上-(原価を含めたすべての経費)

営業利益は皆さんを含め、
店舗の従業員の頑張りによって稼いだ利益額になります。
よく黒字店舗・赤字店舗と言われますが、
ようは営業利益がプラス(売上が経費より大きい)であれば黒字ですし、
反対にマイナス(経費が売上より大きい)であれば赤字と判断されるわけです。

店舗責任者である薬局長は、
この営業利益がプラスなのかマイナスなのかで、
会社からの評価が大きく異なってくることになります。

 

売上総利益の重要性

先ほどの式をもう少し細かく見てみます。

営業利益=売上-原価-原価以外にかかった経費
    =売上総利益-原価以外にかかった経費

売上から原価を引いた金額が売上総利益になるので、
下段の式のように考えることもできます。
つまり営業利益をプラス(黒字)にするには、

 

売上総利益>その他の経費

 

と考えることもできます。
店舗を黒字にするためには売上総利益の額が大きければ大きいほど、
黒字になる可能性が上がっていくことになります。

調剤薬局ではいかに医療用医薬品を安く仕入れるか、
ドラッグストアでは販売商品を安く仕入れるのか、
非常に大きなポイントになります。

 

店舗の経費はどのようなものがあるのか

ここからは店舗の経費について考えてみましょう。
主な経費は以下になると思います。

・人件費
・賃貸料
・光熱費や水道代
・通信費
・レセコンや機器のリース代
・薬袋や容器などの消耗品・・・などなど

 

何度も繰りかえしになりますが、
これらの経費を抑えることができれば、
売上と経費の差額が大きくなりますので、
当然黒字になる可能性が上がるということになります。

 

店舗の努力で削減できる経費ってある?

ここから先は現実的な視線に立って考えてみましょう。
利益を増やしたいと考えるなら、
売上を増やし経費を抑える必要があります。

では店舗で削減できる経費は何になるのでしょうか。

まず最初に売上総利益を増やしたいのなら、
商品の仕入れ値を抑える必要があります。
(厳密には経費ではないですがここでは大目に見てください)
ではあなたが仕入れ値を下げることができるでしょうか。

もしあなたが取引先と交渉権を持っているのならば可能です。
しかしほぼ全員がそんな権利は持っていないことでしょう。

取引先との交渉は基本的には社長であったり、
チェーン薬局であれば本部の担当者が行っていることでしょう。
本部と取引先とで決めた条件や内容に基づき、
皆さんは本部の指示通りに各卸や取引先に発注しているはずです。

つまり薬局長レベルでは値入額を安くする術はありません。
薬局長ではこの数字の改善はできないということになります。

では別の経費について考えてみましょう。

皆さんは物件のオーナーさんと賃貸交渉ができますか?
これもきっとできない方がほとんどでしょう。

光熱費を下げることはできますか?
もちろん無駄な電気を消したりすることは可能ですが、
例えば営業中に空調を切ったり店舗内の明るさを無くしてまで、
光熱費を抑えることができるでしょうか。
春秋は可能だとしても夏の季節に冷房を切ったり、
冬に暖房を切ることはできないと思います。

ただでさえ体調が悪い患者さんが来る薬局で、
待合室の環境が悪化すれば、
より患者さんの体調がさらに悪くなるかもしれません。

リース代は基本的に毎月固定の費用ですし、
薬袋などの消耗品も安い取引先を見つけることもできますが、
だとしても削減額は正直微々たるものです。

つまり薬局長が経費を削減しようと考えた場合、
できることは従業員の人件費を下げることくらいしかありません。
ようは残業代を出さないようにすることくらいです。

店舗の売上があろうとなかろうと、
店舗従業員はサラリーマンですから、
毎月一定額の給料は発生します。
月の人件費を抑えようとするのなら、
個人ごとの残業代くらいしか調整できないのが現実です。

 

利益を上げるのなら売上を増やすことを先に考えたほうが良い

もしあなたが社長から
店舗の営業利益を増やせ
と言われたら、
迷わず売上をどうやって増やすかを考えたほうが断然いいです。

経費を削って利益を出そうとすると、
結局店舗ができることと言えば、
残業代を減らすことくらいしかできないからです。

もちろん無駄な残業は無くすべきですが、
必要な残業まで削ってしまうと、
時間内に終わらない仕事が増えていき、
残業できないからその分給料は減りますし、
従業員のモチベーションも下がりはしても上がらなくなりますよね。

人件費を先に削って一時的に利益を出したとしても、
その効果はあまり続かないと考えたほうがいいです。
従業員のやる気の有無によって店舗成績が変わることを、
私は経験上知っています。

やる気を失った店舗は本当に売上が顕著に落ちていきます。
また一旦下がった従業員のモチベーションをあげることは、
かなり至難の業です。
もう踏んだり蹴ったりの状況に陥っていきます。

ではどう売上を増やせばいいのかという話になりますが、
まずは売上を構成する「客数」「客単価」について、
理解する必要があります。

次回以降で客数と客単価について説明したいと思います。

少しでも参考になったら嬉しいです。

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