少し大げさに書いてしまいました。
表題だけみだら薬局に全く薬が入ってこない印象に感じるかもしれませんが、
そんなことはありません。
ただし薬が納品されにくい状況が続いているのは事実です。
医薬品によっては本当に全く入ってこない状況になっています。
ここで言う医薬品とは「処方箋でもらう医薬品」を指しています。
医師の診断のもと、
薬物治療が必要であると判断された場合に処方箋が発行されますが、
この処方箋で調剤される医薬品が不足状況にあります。
もしかしたらこれを読んでいる方の中には、
「そういえば薬局に行ったら薬がないから断られた」
という方もいるかもしれません。
この状況は薬局ごとに多少の差はあるものの、
全国どの薬局でも起きている状況なのです。
患者からしたら受け入れがたい状況です。
だって治療に必要となる薬が欲しいのに薬局では、
「すいません、薬がないので他あたってください。」
と言われてしまうのだから。
しかも他の薬局に行ったところで、
薬が在庫しているかの確約はありません。
このことは不思議なことになぜかあまり報道されていません。
しかもこの状況はここ最近の話では無いにも関わらずです。
すでに1年以上前から薬の在庫不足は続いています。
実際に各製薬メーカーのHPには、
供給不足となっている医薬品一覧が掲載されています。
ですがTVや新聞、ネットニュースではほとんどその記事を見かけることはありません。
何でですかね。
製薬メーカーは各メディアのスポンサーだからでしょうかね…。
まあ皮肉は置いといて、
この状況は疾患によっては非常にまずい状況にあります。
言葉は悪いですがそこまで命に直結しないなら、
薬を飲まなくても何とかなりますが、
病気によっては薬を飲まないと日々の生活に支障が出る場合もあります。
だから薬局の立場から言うと、
「薬がないから他の薬局へ行ってください。」
とは申し訳なくて軽々しく言えないのです。
最近では慣れてきましたが、
やはり患者から薬局に対しクレームを言われることもありました。
もちろんどこ行っても薬がない状況は、
とてもつらいことなので、
つい言いたくなるのはわかるのですが・・・。
悪いのは薬局ではなく製薬メーカーです。
と、大きな声で言いたい。
(スイマセン、愚痴です)
もし薬がないと言われた場合の対応ですが、
①処方された病院の近くの薬局に行く
②以前同じ薬を出してもらった薬局に行く
確実にというわけではないですが、
薬をもらえる確率はかなり上がると思います。
事の発端はジェネリックメーカーの小林化工の不祥事からはじまりました。
詳しい内容は下記を見て頂きたいのですが、
簡単に言うと全く違う成分の医薬品を混入させ、
その医薬品を市場に流通させてしまい、
該当する医薬品を服用された方が亡くなってしまったという事故です。
当然該当する医薬品は回収対象となりました。
(小林化工のプレスリリースはこちら)
この事故をきっかけとして、
医薬品医療機器等法違反による営業停止の行政処分が下されました。
単に異物混入事故を起こしたばかりでなく、
承認書に基づく製造過程を違反したこと、
虚偽の報告を行っていたなどが発覚したためです。
これにより小林化工の製造ラインが完全に止まってしまいました。
もしここで小林化工だけの問題で終わっていればよかったのですが、
この影響は他のメーカーにも影響が出てしまいました。
この小林化工は自社製品だけでなく、
他の製薬メーカーから委託製造していたのですが、
その医薬品にも影響が及びました。
当然これらの医薬品も回収対象となりました。
この段階でかなりの医薬品の流通が悪くなってしまいました。
それでも納品時期が遅れるだけで全く止まってしまう事態ではなかったのですが、
悪いことは次から次へと重なるもので、
ジェネリック大手メーカーの一角である日医工にも不祥事が発覚してしまったのです。
一部抜粋・全文書はこちら
しかも記事にある通り、小林化工と同様、
行政処分が行われ約1か月ほどの営業停止処分が下されました。
大手メーカーのためその流通量は多く、
おそらく全国どの病院や薬局でも採用してたメーカーだったはずです。
当然病院や薬局は他の製薬メーカーに切り替えることになります。
しかしあまりにも切り替える数量が多かった影響で、
他メーカーの在庫数と製造能力では賄えきれない量となってしまいました。
その結果医薬品の物流に制限がかかってしました。
医薬品によっては全く納品されない状況になってしまったのです。
薬局業界の慣例として医薬品不足になった場合、
今まで取引実績のある薬局を優先して納品する
というのがあります。
需要が在庫数を上回った場合は、
新規注文を受付けず、今までの取引先の薬局を優先させます。
例えばの話として、
今まで日医工の医薬品を使っていた薬局が、
薬が入らないため他メーカーのA社の医薬品を卸に発注したとしても、
卸からすれば今まで取引実績ない薬局からの注文となり、
これまで取引実績のある薬局を優先してしまうため、
新規で発注した薬局には納品されないという事態になります。
(もちろん医薬品在庫が豊富にあればこのようなことは起こりません)
こうなるとジェネリックメーカーが医薬品を増産すれば解決するように思えますが、
ジェネリックメーカーは生産規模がそれほど大きくない会社も多く、
簡単に製造ラインを増やすことが出来ません。
またこの2年ほどコロナウィルス感染の影響により、
船便での輸送が停滞している状況にあります。
もし海外に工場があれば輸入量が減少することとなります。
仮に工場は国内にあっても原料は海外から調達しているケースも珍しくなく、
これも生産量を簡単に増やせない原因の1つとなっています。
ではジェネリック医薬品を同成分である先発品に変えればよいと考えられますが、
そもそも今の日本のジェネリック使用率は数量ベースで80%ほどあります。
この数字は厚生労働省のサイトより発表されています。
つまり先発品は市場の2割程度しか使われていません。
この割合では一気に注文数が増えてしまうと対応することができません。
当然先発品の流通も制限がかかりました。
次に考えることとして
先発品メーカーが生産量を増やせないのか
という話になりますが、
今の医療制度では絶対とは言いませんが、
大きく増やすことはないでしょう。
それはなぜか。
ポイントは「薬価改定」と「診療報酬」になります。
この話をすると長い話になってしまうため、
別の機会で書きたいと思います。