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薬剤師が知っていてほしい数字のお話 その⑧~経費について考えてみる~

薬局長を8店舗、エリアマネージャーを計10年を経験し、
現在課長職として働く現役薬剤師のta-sanです。
今までの経験を踏まえて薬局長として知っておくべき知識や、
学んでおくと役立つことをツラツラ綴ります。

この内容の対象者として以下のような薬剤師さん向けの内容になります。

・最近初めて薬局長(管理薬剤師)になった方
・薬局長の経験が短い方
・薬局長として働いているが経営数字が苦手な方
・経営数字を学びたいがどう学んでいいか悩んでいる方

またここでいう薬局長とは、
「薬局において運営・管理を任された方」
を指しています。
(コンビニやスーパーで言うと店長になります)

薬剤師向けの話になりますので、
いわゆる調剤薬局をイメージした内容になりますが、
ドラッグストアの物販薬局長の方でも、
理解できるように説明します。

 

経費について考えてみる

今回は経費について考えていきます。

そもそも経費にはどんな項目があるか考えてみましょう。
確認するうえで一番わかりやすいのは、
皆さんが勤めている店舗のP/L(損益計算書)を見るのがいいと思います。
P/Lを説明すると簡単に言えば「店舗の家計簿」でしょうかね。
(P/Lについてはまた別の機会で説明します)

一般的な経費の項目は以下になると思います。
これは調剤薬局でもドラックストアでも項目は、
ほぼ同じとなります。

・人件費
・賃貸料(家賃)
・光熱費や水道代
・通信費
・レセコンや機器のリース代
・薬袋や容器などの消耗品・・・などなど

おさらいになりますが、
店舗の利益を計算する場合は下記の式になります。

利益=売上-経費

 

ものすごくシンプルですよね。
もしあなたが上司から、
「店舗の利益をあげろーーー!!!」
って言われたら、
売上を増やすか経費を下げるかになります。

もちろん利益は売上と経費との差額になるので、
経費が増えたとしてもそれ以上に売上が増えればOKですし、
経費を下げたとしてもそれ以上に売上が落ちてしまえば、
結果として利益額は少なくなります。

 

経費には大きく2つに分けることが出来る

さて経費には大きく分けて2つに分けることが出来ます。
「固定費」「変動費」という言葉を聞いたことがあるでしょうか

 

固定費:売上の増減に関係なく、常に決まった金額がかかる経費

変動費:売上の増減によって、連動して金額が変わる経費

 

用語自体を覚えなくても構いません。
要は何をしなくても必ずかかってしまう経費なのか、
売上によって金額が変わる経費なのかの2つのパターンがあるんだな、
程度で大丈夫です。

では具体的に分けていきましょう。
薬局運営にかかる主な項目をあげ、
固定費なのか変動費なのか考えてみます。

家賃→固定費
家賃は毎月一定の金額がかかる費用ですので固定費になります。
売上が増えようと減ろうと毎月に支払いは一緒ですよね。
またその月に店舗を休みにして営業日が減ったとしても、
家賃は変わりませんよね。

 

 

ちょっと余談・・・

 

厳密にいうと家賃の契約が
「固定金額+売上の数%」
というないようになっている店舗もあります。
つまり固定費の概念と変動費の概念が混ざったような契約です。

ですがこういう契約は薬局にとってはまれな契約になると思いますので、
ここでは固定費のみの概念で考えています

 

水道光熱費→固定費
例えば売上が1.5倍になったとしても、
水道代や電気代が1.5倍になるわけではないですよね。
逆もしかりで今月は売上不振だから、
店舗内の冷暖房を切って蛍光灯も消そう
とはなりません。

お客さんが多い月であろうと少なかろうと、
冷暖房は使いますし照明も消すことはないはずです。
水道の使用量も売上に左右されるものではないので固定費となります。

 

人件費→固定費
基本的に人件費(つまり私たちの給料)は、
固定費で考えたほうがわかりやすいと思います。
月の売上が悪くなったからと言って、
翌月の給料がさがった・・・なんてことはないですよね。
もしかしたら売上の少ない月(要は暇な月)は、
残業代が減るかもしれませんが、
基本給は支払われますから固定費として考えましょう。

 

 

薬剤師1人当たり40枚制限はどう考える?

ここで察しの良い方は気が付いたかもしれません。

「あれ、でもちょっとまって
調剤においては薬剤師1人当たり40枚制限があるんじゃない?
だとしたら売上(ここでは処方箋枚数)が増えたら、
人件費もその分増えるのだから変動費?」

これに気が付いた方は経営に対してすごくいいセンスを持っていると思いますよ。
(私が数字の勉強を始めたころは全く気が付かなかったので、
少なくとも私よりもずっとセンスはいいはずです)

実は人件費は考え方によって、
固定費にも変動費にも当てはまります。
これは業界によって少し考え方が異なるようです。

仮に人件費を変動費だと考えてみましょう。
薬剤師が何名所属しているのか、
月の出勤日を22日(ざっくり週休2課として計算)と仮定すると、
各人員に対する最大の処方箋枚数は以下の通りです。

薬剤師2名(80枚/日)   22日出勤 → 1,760枚
薬剤師3名(120枚/日) 22日出勤 → 2,640枚
薬剤師4名(160枚/日) 22日出勤 → 3,520枚

 

例えばあなたの勤めている店舗が、
「先月は2640枚だったけど今月は処方箋少なくて1760枚になった」
なんてケースほとんどないと思います。
ここまで月が変わる度に客数が変化することは、
あまり現実的では考えにくい数字だと思います。

逆もしかりで2640枚から翌月3520枚に大幅アップ
なんて話聞いたことないですよね。

もちろん薬局開業して始めの数年は劇的に処方箋も伸びると思いますが、
時期が来れば処方箋枚数はある程度の一定数に落ち着くはずです。
枚数がある一定の範囲内で動くということは、
毎月の人員が変わる必要が無くなります。
つまり人員も一定数に落ち着くということになります。
ですので変動費という考えよりは固定費として計算する方が、
薬局においては現実的ではないかと考えます。

 

原価→変動費
薬局やドラックストアも含めた小売業の最大の変動費と言えば、
なんといっても原価です。
つまり商品の仕入れ値ですね。
考えてみれば簡単で、
例えばドラックストアの場合、
売上が増えれば仕入れる商品数も増えていきます。
変動費は売上の増減に左右される費用ですから、
まさに商品の仕入れ値は変動費そのものとして考えることが出来ます。

調剤薬局も同じですね。
売上が増えるということは調剤する医薬品が増えることになります。
逆に売上が減れば調剤に使用する医薬品も減りますから、
仕入そのものが少なくなるというわけです。

 

売上と固定費・変動費の関係性

ここからは売上とそれぞれの経費の関係性について考えてみます。
まずは下のグラフを見てください。

 

まず横軸は売上を、縦軸は経費の総額を示しています。
表で色分けした箇所の説明ですが、
青く示した部分が固定費、
黄色の部分が変動費だとイメージしてください。

もし売上が0円の場合、
変動費は当然かかりませんので、
売上0円の月の経費は固定費の金額のみになります。

売上が増えることによって影響を受けるのが変動費ですから、
横軸が右にずれるほど(つまり売上が上がるほど)、
変動費(緑ライン)が上がっていきます。
つまり変動費が増えていることを示しています。

売上が増えたとしても固定費(青ライン)は影響を受けないため、
どんなに売上が増えたとしても一定額になります。
一方変動費は売上が増えた分で連動して増えていくため、
売上が0円以上であれば必ず経費は「固定費+変動費」になります。

 

今回はここまでとします。
次回は先ほどの固定費と変動費についてもう少し深堀したいと思います。

今回のおさらいとして、
単語の意味を一字一句覚える必要はありません。
まずは経費って毎月同じようにかかるものと、
売上によって増えていく経費がるんだな・・・
といった具合で、何となくイメージできる程度で大丈夫です。

今回の内容が少しでも参考になったら嬉しいです。

 

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