働き方の話

本当に調剤だけでいいのか?薬剤師が見直すべき働き方と3つの対策~第1回:将来への不安と変化の兆し~

「調剤に偏った今のスタイルで、果たして今後の薬剤師は生き残れるのか」

ここ最近、私が強く感じている問題意識のひとつです。
保険医療における調剤業務は確かに重要な役割を担っていますが、
気づけば多くの薬剤師が“調剤だけ”に偏った働き方をしてはいないでしょうか。

AIや機械化の波が医療現場にも押し寄せ、
DXの推進によって国民のニーズも少しずつ変化しています。
2年に1度の診療報酬・調剤報酬改定でも、
「求められる薬局像」「薬剤師像」が更新されているにもかかわらず、
実際の現場では調剤業務に閉じた日々を過ごしているケースが多く見られます。

皆さんの中にもそんな“違和感”を感じたことはないでしょうか。

特に6年制教育を経た世代は、
処方箋対応こそが薬剤師の中心業務と教えられてきました。
それは決して間違いではありません。
ただ現場に立っているともっと広い視点や役割が必要ではないか——
そんな思いに駆られることも少なくありません。

私自身これまでGMS(総合小売業)やドラッグストア、
調剤薬局と多様な現場を経験し、管理職も含めて現場を見てきました。
今回はその経験も交えながら今の調剤業務に感じる不安や違和感、
そして「これからの薬剤師」に求められる役割の変化について、
一緒に考えていきたいと思います。

調剤薬剤師の今とこれから:働き方に感じる3つの不安とは?

調剤中心の業務がルーチン化している現場

基本的に保険調剤薬局では処方箋に基づいた調剤と投薬業務が日々繰り返されます。
正確な調剤はもちろん重要ですが、
現場の実感として「毎日が同じことの繰り返し」と感じている薬剤師も多いのではないでしょうか。

たしかに患者の疾患や症状によって処方内容は変わりますし、
それに応じた説明も必要です。
とはいえある程度勤務を重ねると、
主治医の処方意図が読めるようになり、
結果的に患者は違えど投薬内容は似てくるというケースも増えてきます。

そうなるとやりがいを感じにくくなり、
言葉は悪いですが「つまらない業務」として日々を過ごすようになることもあるのではないでしょうか。

薬剤師としての将来に不安を感じる理由

これまで調剤業務は、
薬剤師という国家資格を持つ者にのみ許された“特権的”な仕事でした。
それが2019年ひとつの大きな転機を迎えます。
いわゆる「調剤補助」が解禁されたのです。
もちろんすべての業務ではないとはいえ、
無資格者が一部の調剤作業を公に担えるようになったのは、
業界にとって大きな変化となりました。

またここ数年の調剤業務の機械化が急ピッチで進んでいます。
処方入力と同時に調剤が自動化されつつあります。

これは国が進める「対人業務の重要性」を組み取った流れではありますが、
一方でこうした変化が起きたにも変わらず、
実際の薬剤師の対人業務は、
さほど変化をしていないと感じる方も多いのではないでしょうか。
調剤業務がいい意味で軽くなる一方で、
社会から求められる薬剤師像をつかみきれず、
「結局、今まで通りの仕事しかしていない」という感覚も根強く、
今の業務に不安を感じる方もきっと多いはずです。

6年制世代が抱える「働き方の選択肢」の狭さ

2006年から薬学部は4年制から6年制に移行し、
より高度な技能と知識を持つ薬剤師の育成が目指されるようになりました。
しかし一方で「薬剤師=調剤業務」という図式が、
強く意識されるようになったと感じます。

特に薬局や病院での実務実習を通して、
「患者対応=処方箋対応」という意識が定着しやすくなり、
就職先も病院・調剤薬局・ドラッグストアといった、
調剤中心の職場に集中する傾向があります。

さらにそうした職場に就職したとしても、
実際の業務は調剤に偏りがちで、
OTC販売やサプリメント、健康相談や物販など“調剤以外”の業務には関与しない、
あるいは距離を置くケースが多く見受けられます。

薬剤師本人としては与えられた業務を全うしているつもりでも、
結果として将来のキャリアの選択肢を自ら狭めてしまい、
「調剤以外の道」を描けなくなっているように思えてなりません。

薬剤師の将来性はある?変わるニーズと新しい3つの役割

単純調剤業務は自動化・AI化が進んでいる

ここ数年の薬局の現場では自動分包機や調剤棚ロボットなど、
調剤業務の機械化が急速に進んでいます。
処方入力と連動して薬を自動で取り揃えるシステムや、
ピッキングをサポートするAI技術も導入が進み、
薬剤師の「手を動かす仕事」は年々減りつつあります。

これは調剤報酬が「対物業務」から「対人業務」へと、
加算の軸を移していることが背景にあります。
では求められる対人業務とは何か。
我々薬剤師はこの問いに真剣に向かい合っているでしょうか。
薬局運営もビジネスですから収益を上げなくてはなりませんが、
結果として加算を取るための対応に終始していないでしょうか。
薬剤師として本当にやるべきことは何なのか・・・
今まさに分岐点に立たされているのだと思います。

求められるのは“対人力”と“判断力”

先ほども申した通り国は「対物業務から対人業務へ」と方向転換をし続けています。
言い換えれば「薬を渡す薬剤師」から「患者(地域医療)に寄り添う薬剤師」として、
役割を求められているのです。

これは調剤報酬上の加算対象となる行為だけを求められているわけではありません。
生活背景やセルフメディケーションの支援、
他職種連携など調剤報酬内でのフィーが発生しない対応も求められているのです。

これらは単なるマニュアルでは対応しきれない分野でもあり、
薬の視点からだけではない別の視点からの、
“人と向き合う力”“その場で判断する力”が必要不可欠になってくるのではないでしょうか。

薬剤師に広がる新しい業務領域とは?

これまで薬剤師の業務といえば、
調剤室で処方箋をもとに薬を調剤し投薬を行うというのが一般的なイメージでした。
しかしこのイメージは過去のものであり、
これからの時代は薬剤師の活躍の場はもっと別にあるはずです。

例えばOTC医薬品や健康食品の提案、
セルフメディケーション支援といった“病気の前段階”に関わる場面です。
今までのような病気になってからの対応ではなく、
言うなれば病院に行く前段階のポジションとして、
”薬剤師の専門性を活かさなければならない時代”になっていると考えます。
場面によっては地域の健康イベントでの相談対応、
学校や企業での健康講話なども当てはまることでしょう。

現在多くの薬局でもDX対応が進み、
オンライン服薬指導や電子処方箋への対応機器が次々と導入されています。
これらは単なる「作業効率化」のツールではなく、
薬剤師としての新しい役割を担うための武器にしなくてはなりません。

国の医療に関する予算が増加の一途を見せる中、
今までと同じ業務を行うだけでは、
「薬剤師として生き残るのは難しいであろう」
という危機感を感じている薬剤師の方は多いと考えます。

調剤という枠の中に閉じこもるのではなく、
自分の専門性を社会の中でどう活かしていくか——
それをまずは考え始めることが、
薬剤師としての“次のステージ”への第一歩になるのではないでしょうか。

まとめ

今回は調剤業務を中心とした薬剤師の働き方に対する疑問や、
将来への不安について掘り下げてきました。
保険調剤は今も大切な業務ですが、
それだけにとどまっていてはこれからの変化に取り残されてしまう——
そんな感覚を持っている方も少なくないことでしょう。

次回はそんな変化の時代において OTC医薬品や物販の分野に注目する理由
そして薬剤師としての新たな役割やキャリアの選択肢について、
もう少し踏み込んで考えていきます。

少しでも興味を持った方は、ぜひ次回も読んでみてください。

 

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