blog

卸と交渉できない薬局がつぶれていく時代が来た?

2021年度ももう終わりという3月30日に、
公正取引委員会は独禁法違反(不当な取引制限)で、
医薬品卸大手3社に計4億2385万円の課徴金納付を命じたとの報道がありました。

詳しい報道内容は下記の通りです。

独立行政法人「地域医療機能推進機構」が発注した
医療用医薬品の入札をめぐる談合事件で、
公正取引委員会は30日に独禁法違反(不当な取引制限)で、
医薬品卸大手3社に計4億2385万円の課徴金納付を命じた。
再発防止を求める排除措置命令も出した。
命令を受けたのは、アルフレッサ(東京都千代田区)、
東邦薬品(世田谷区)、スズケン(名古屋市)。
メディセオ(東京都中央区)も違反認定されたが、
調査前に申告したため処分は免れた。

そもそもの発端は
2016年と18年の同機構発注の医療用医薬品の入札で、
受注調整していた担当者らが貸し会議室に集まり、
受注比率と落札予定者を決定したことに始まりました。
その後応札価格を書いた紙を東京駅付近で受け渡し、
情報交換していたとのこと。

この手の話はどの業界にもちょくちょくあることで、
言い方は悪いですが珍しい事ではないかと思います。

もちろん談合そのものを肯定するつもりはなく、
入札はフェアに行われるべきだと考えます。

しかしいまの医療業界においては、
正直言うとこういった談合が、
「いつ」「どこ」においても行われているんじゃないの?
という印象があったはずです。
少なくとも約20年この業界で働いている私にとっては
そう感じています。

今回処分を受けたのはアルフレッサ、スズケン、東邦薬品の3社ですが、
実はメディセオも大元では関わっています。
今回先に不正を申告したので処分を受けなかっただけのことです。

 

各卸を取り巻く環境

現在日本における医療用医薬品のシェアは、
この上記4社でほぼ占めています。
グループ会社を含めてしまうと、
この4社を全く取引をしていない病院や薬局は、
ほぼないと思われます。

ここ20年ほど医療卸はM&Aを繰り返してきました。
激しい価格争いを売り返すうちに、
体力のない卸は淘汰されていきました。

医療卸は他の業界の卸よりもより強く求められる点として、
納品までの時間短縮を取引先(医療機関)より求められることにあります。
命を左右しかねない医薬品を扱うためで、
電話発注から数時間以内で納品したり、
取引の金額の大小に関係なく、
一日に何回も薬局に納品することはざらにありました。
これが何年にもわたり当たり前のように行われてきました。

当然人件費や配送コストはかかり、
かつ医薬品はどこの卸から仕入れたとしても、
薬の価格(薬価)は国で決められているため、
差別化はほぼ値引しかない状況にあります。

徐々に各卸の利益幅は少なくなっていきました。
M&Aが進むのは必然でした。
結果としてメディセオ、アルフレッサ、スズケン、東邦の4社に絞られていきました。

この流れがあったわけですから、
談合が行われたとしても、
同じ業界の方からしたら、
至極当然のように感じたはずです。

 

行政処分が各卸にどう影響を及ぼすのか

さてこの処分がどういう影響が出るのか、
病院や薬局の取引担当者は戦々恐々としていると思います。
いやすでに影響が出ているといっていいでしょう。

正直に言うと私の勤める薬局にも影響が出始めました。
大きく2点あります。

①納入価(薬価差)
②配送便の減少

薬局によっては各卸より納入価についての見直しを通達されているはずです。
今までとおなじような納入価は出せないという意思表示だと思います。
そして卸によっては配送回数を4月より減らされ始めています。

もともと各卸の収益性は全くと言っては大変失礼ですが、
ほとんどないのが現状です。
例えばアルフレッサの2019年度の営業利益は、
1.77%ほどしかありません。

この件の処分による追徴金は卸にとっては痛手だと思います。
ましてや今回の件で「地域医療機能推進機構」に対して、
多額の契約違約金が発生するとなると、
利益に対してかなりの追い打ちになっていることは間違いありません。

各卸ともアップアップなわけです。
生き残るためにグダグダしている時間はありません。

取引先の医療機関に対しては納入価の交渉をし、
差別化の武器である納品回数を減らし、
配送コストを抑えなくては、
もう生き残れないと判断したとしても、
何ら不思議ではありません。

 

納入価の交渉により薬局へ与える影響とは

さてこの納入価についてですが、
病院を含め医療機関において非常に大きな影響があります。
当然納入価が上がれば医療機関の収益は下がります。

薬局視点で伝えると、
そもそも医療費は非課税扱いです。
ですが治療に使われる医薬品や医療機器などは課税対象です。
(一部例外はありますが)
つまり医薬品購入においては治療を受けた患者が最終購入者とはならず、
薬局が最終購入者となります。
つまり薬局が消費税を払うことになります。

仮にですが卸から10%値引きで医薬品を購入したとすると、
消費税を払う分で打ち消しあってしまうので、
結果全く利益差が出ない計算になります。
実際にこの値引(薬価差)が薬局の大きな収入源になっているケースがほとんどです。
薬価差の減少が薬局の経営にも大きく影響するのです。

すでに10年以上前から薬局はつぶれていく時代になっています。
一般の方からすれば薬局はずっと増えている印象があると思いますが、
増えているのは大手のチェーン薬局であって
昔から街にあるような薬局や、
数店舗ほどで経営しているローカルチェーン薬局は、
M&Aにより買収されるなど日常茶飯事にあります。

むしろM&Aできる薬局はまだいい方で、
全く見向きもされない薬局も非常に多いです。
ひっそりと店をたたむケースも増えています。

卸から見て魅力的に映らない薬局は、
薬価差交渉もできず配送ももっと減らされることでしょう。
また国の政策として薬局の数を減らす政策を取っています。
店舗減少にさらに追い打ちをかけることになるのは明白です。

もはや医療機関も経営基盤が弱いところは、
完全に淘汰される時代となりました。
近所の薬局が気が付いたらなくなっていた・・・、
なんて当たり前の時代が来るのではないでしょうか。

薬価差の減少が実際にどれくらい薬局収益に影響するのか、
また別の機会で書きたと思います。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA